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sizuo__notの説明書になります。
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自己責任でお読み下さい。



薄っぺらい皮だなと、触れた胸を撫でながら思った。
薄っぺらい。この肌の下には、血と肉と骨で満たされている。殴れば痣になるし、切れば血が溢れる。折ろうと思えば容易く手折れる事も知っていた。簡単だ、力の加減をせずに全力をかければ体を支える骨を砕くことなど容易な事だ。そう、自分には。
それがわかっていながらも、なぜだろうなぁと疑問に感じる。
俺は目の前のこの男、折原臨也を殺したいほどに大嫌いだってのによぉ。

「シズ、ちゃん……」

ふいに名前を呼ばれる。俺をこんなふざけた呼び方で呼ぶのは、こいつぐらいなもんだ。返事を返さずに触れていた手を動かし、腹から脇腹へと触れると肌の下にある骨の形がよくわかった。
あばらが、浮き出てやがる…。
こいつがどんな不摂生な生活をしているのか知った事じゃねぇが、見るたびに思う。こいつは、細すぎる。
ちゃんと飯食ってんのか?そうは思っても、そんな質問を投げかける間柄ではないとわかっていた。そんな、心配しているような台詞が吐けっかよ。冗談じゃねぇ。そう思った所で、もう一度シズちゃんと呼ばれる。

「なんだよ」

今度は返事を返すと、こちらを見下ろしてくる赤い瞳が細められる。どこか嬉しそうに見えるのは気のせいだろう。

「ちょっと、さ…集中、してよ…」
「うるせぇ、文句言ってんじゃねぇ。死ね」
「はは、ひっどいの…こんな時に、そういう事言う…?」

力なく笑った臨也は緩く首を傾けて見せる。次の瞬間、臨也の手にはナイフが握られていた。いつの間に手にしていたのか、何度も目にしてもわからぬ程に臨也はナイフの扱いに長けていた。
部屋の明かりを受けて光る小型ナイフを見上げると、臨也はぽいっとそれを床に投げる。

「やめた。別に今、その時間じゃないしね?」
「………」
「今はさ、セックスの時間。ほらシズちゃん、頑張ってよ…俺にだけ動かさせるつもり?」

問い掛けながら顔を寄せてきた臨也は、間近で妖しく笑みを見せると俺の唇を舐めてきた。



折原臨也との付き合いは長い。
付き合いと言っても腐れ縁だ。同じ高校に通う事で出会った縁は、高校を卒業して数年経った今でも続いていた。顔を突き合わせば主に喧嘩、喧嘩、喧嘩しかしてこなかった。俺も臨也も、街中で顔を合わせばお互い武器を手に周りの迷惑なんぞ関係なく相手を倒そうとする。
殺意を込めて、本気の喧嘩だ。
その喧嘩の合間に、違う意味で体力を使うようになったのは何年前か。正確には覚えちゃいねぇが、まだ来神の制服を着ていた頃だった。なぜそうなったのかも、よく思い出せない。
だが臨也の強引な誘いに乗って始まった事だけは覚えている。

『ね、シズちゃん…童貞卒業おめでと』

そんなふざけた台詞を向けられた事だけは今でも忘れられねぇ。
当時の怒りがこみ上げてきて、力の加減ができずに手に力を込めれば大きく非難の声が聞こえてきた。

「ちょ…痛い痛い痛い!シズちゃんのバカっ、いきなり何…痛いって!離…せ!」

手の甲に爪を立てながら叫ぶ臨也の姿に、いつの間にか掴んでいた腰を折りそうな程強く握っていた事に気付く。手を離せば、括れのついた腰に指の跡がくっきりと残っていた。

「うっわ、最悪…あぁもう、痛いし…」
「………」

わりぃ、と言いそうになった口を慌てて閉ざす。これが他の奴ならば、俺は迷うことなく謝罪を口にしていただろう。俺に喧嘩を売ってきた相手ならともかく、誰かに痛みを与える事は俺は好きじゃねぇ。
歩く暴力マシーンだとか言われちゃいるが、そもそも俺は暴力は嫌いだ。人より強い力を何度も呪った事もある。自分のせいで誰かが傷付く姿は、見たくはない。この男、折原臨也以外は。

「ねぇちょっと、シズちゃん聞いてんの?」
「聞こえてんに決まってんだろ」
「だったら返事してよね…。ハァ…この跡すぐに消えそうにないんだけど。くっきり指の跡残っちゃってるし」
「そうだろうな」
「何その適当な返事!誰のせいだと思ってんの!?」
「俺だろ」
「わかってるなら…」
「うるっせぇな、黙れ」
「んんっ!?んっ、んー…!」

言葉を塞ぐように唇に噛みつき、わざと歯を立たせてから唇を重ねると塞いだ口の中から更に文句が聞こえてきたが無視する。頭に手を回して逃がさないようにしながら腰を動かせば、臨也の喉がひくりと鳴った。
そのまま腰を揺らすと締め付けが増し、臨也の腰も同じように動き始めた様子を確かめて口を離すと聞こえてきたのは文句ではなく嬌声だった。

「ぅぁっ、ぁ…ッ、ンッ……ふ、んんっ…!」

言葉になっていない声の羅列。

「ァッ、ぁ…ん、ック……ぁ、あっ」

掠れた甘い声が部屋を満たしていく。
女みてぇな声を出すなと、昔文句を言った事もあった。

『仕方、ないじゃん……シズちゃん、前に比べて…ァッ、すごい…巧くなって…』

そう言われたのはいつの時だったか。もう思い出せないほどに、この関係を続けている事に気付かされる。
顔を合わせれば、いつも喧嘩。
それが俺達が他人に与えているイメージだろう。実際に、喧嘩はする。俺はこいつの顔を見るだけで怒りが沸き起こり、そこにあるポストだろうが自動販売機だろうが引っこ抜いて投げつける。
大抵は避けられるが、分かっていてもそうせずにはいられなかった。沸き起こる怒り、怒り、怒り。脳みそが沸騰するようだと、怒りに支配されるとそう感じる。追い掛けて、暴れて、お互い血を流す。(臨也の場合は逃げるのが巧いんで無傷の場合もあるが)
そして数分後には怒りの沸点が下がり、俺が落ち着いた所で喧嘩は終わりだ。臨也はそのまま姿を消す事もあるが、大抵がその後俺に近付いてくる。こいつはこいつなりに、俺の性格を把握してるって事だろう。
一度爆発した怒りは、爆発が治まると当分は再発しない。

「シズちゃん、ちょっと付き合ってよ。俺がホテル代払うからさ」

ね?と、甘えた姿を見せられたのが今現在、ラブホテルにいるきっかけだった。


こいつがなぜ、俺を誘ってくるのか。俺と、こうしてセックスするのかはわからねぇ。
俺もなぜ、こいつの誘いに乗るのか。溜まった時に思い出す顔がこいつなのかは、わからねぇ。


脇腹に触れる。
掴んだ指の跡はくっきりと残り、そこだけ見れば暴力を受けたように見えるだろう。実際に暴力だったと言われれば、否定できないが。

「ん…?気に、なるの?」

問い掛けながら見下ろしてくる臨也は、細かった。脇腹だけじゃない、跡を残そうと思えば馬鹿力である俺でなくても容易い事だろう。腹も、足も、腕も。首も、簡単に折れそうな程に。細い。

「シズちゃんが気にして、くれるなんて…思わなかったな」

声が嬉しそうに聞こえるのは、気のせいだろう。こいつはこうやって、人に甘えて好意を勘違いさせるのが巧い。人一倍整った外見も利用して、こいつは愛しているとほざく『人』の為に偽りの好意を見せる。

「気にしてねぇ、折っときゃいいと思っただけだ」
「ひっどいなぁ……ねぇ、もういいからさ…集中してよ。シズちゃんのだって、こんなに硬くなってるのに」

言葉と共に締め付けられると自身がドクリと脈動する。
臨也の言う通りだった。硬く育った自身は、既に限界に近い。自分で動かずとも、俺の上に跨って繋がってきた臨也はさっきからずっと腰を使ってきていた。狭くて熱い内壁に擦られ、締め付けられると反応しない男はいないだろう。
それが例え、殺したい程に大嫌いな男でも。
いい加減にイっておくかと思い臨也の腰を掴む。力の加減ってのは面倒だったが、いつものように加減して掴んだ腰を揺さぶりながら奥を突き上げれば臨也の背中が反らされる。

「んぁっ!…も、いきなり…やる気になってくれた?」
「手前が下手でイケそうにねぇからな」
「失礼すぎ……ンッ、ぁ…ァッ!」

俺の腹に手をついたまま喘ぐ臨也のモノも、既に限界が近いのかはち切れそうになっていた。その大きさで相手の限界に気付くほど体を繋げているんだと、こんな部分でも気付かされる。

「っ…締め、すぎだ…」
「その方がイイ…でしょ?あっ、ゃ…ぁ、も…だめ、もう…」

ビクビクと震える臨也は泣きそうな声を上げた。
近付く絶頂は、怒りに似た感覚を与えてくる。体が、頭が、沸騰したヤカンみてぇに熱くなる。自然と息が乱れ、ハァハァと荒い呼吸を繰り返しながら乱暴に細い体を突き上げた。
自分がどんな顔を見せているか、どんな声を出しているかを気にする余裕もなくなる。
腰に熱が集まり、イキそうだと思った瞬間にきつく締め付けられた。

「ぁ…ィ、イク…イ……んんっ!」

ぎゅうう、と締め付けてくる臨也の中で絶頂を迎えた時には、俺の腹にも臨也の精液が吐き出されていた。

「ぅ…ァ、ァ……」

びくんびくんと跳ねる体。
熱に浮かされたようにとろんとした表情で俺を見た臨也は、そのまま上体を倒して体を預けてきた。掛かる重さを感じながら、首筋辺りで吐き出される熱い吐息を感じながら、俺は自分の手が勝手に動きかけていた事に気付く。
無意識に、いつの間にか上げていた腕。
その腕がもう少しで臨也の背中を抱こうとしている事に気付き、俺は慌てて腕を下ろした。チッと舌打ちが出る。俺の体は、こんな時でも俺の言う事を聞いちゃくれねぇ。喧嘩の時と同じだ。
感情に支配されて勝手に動く体は、自分のもんだってのに忌々しく感じる。

「何それ、終わった直後に舌打ちとか失礼すぎ」

不機嫌そうな声が聞こえた。こいつの場合本当に不機嫌なのかは、声だけじゃ判断できねぇが。

「うるせぇ…黙れや」
「黙ったらシズちゃんが優しくなるなら、黙ってもいいけど?」
「ふざけんな」
「俺はいつだって、ふざけてないのにねぇ…」

どこがだ、と文句を言おうとするが唇に触れてきた感触に止められる。柔らかな唇が押し付けられ、啄むように口付けられるとぞわぞわと鳥肌に似た感覚が体を襲う。まるで初めてキスする少年のような口付けだ。こいつはたまに、こんなキスをしてくる。

「あはは…シズちゃん、まだ足りないんだ?」

間近で笑い声を上げた臨也が、酷く楽しげに問い掛けてくる。その言葉で俺は、まだ臨也の中に埋まったままの自身が固さを保ったままでいる事に気付いた。嬉しそうに笑った臨也は俺の首に腕を回してくる。
躊躇う姿など、全く見せずに。

「俺もまだ、足りないからさ」

ね?
甘える声だ。
こいつが俺以外にも、こんな声でねだっているのかは知らねぇ。知る必要もねぇ。
背中には手を回さずに脇腹の力だけで体を起こし、体勢を入れ替えるように臨也をベッドに押し付けた。休憩する間も与えずに腰を動かすと、臨也の口から掠れた声が溢れ出してくる。
俺はそのまま、欲望をぶつけるように臨也を抱き続けた。乱暴に、だが手加減はして。



「またね」

服を身につけた臨也は、ホテル代を置くとすぐに部屋を出て行った。
最後の言葉はいつもと同じだ。またね、と。次があるのだと教えてくる言葉。何も返さずに取り出した煙草に火を点け、吸い込めば馴染みもある味に気持ちが落ち着いてくる。
終わればすぐに去っていく臨也の様子に、あんだけやって足腰が動くのかと呆れながら思うのはいつもの事だ。それ程乱暴に何度も、何度も抱いた。痛みだって与えているはずだ。
それなのに、なんであいつは俺の所に来る?
考えても答えなんて出ねぇのは分かっている。考えつくのは、精々嫌がらせだろうって事ぐらいだ。大嫌いな俺が、性欲に支配されて我を忘れそうになる姿を見るのが楽しいんだろう。
だがそれも、お互い様だ。
いつも飄々とした姿のあいつが、俺に抱かれて何度も達していく。時には泣くほどに感じて、表では見せられないような顔で甘い声を上げる姿。

「チッ…」

思い出せば再び体に火が点きそうになり、考えを振り払うとベッドを下りる。身支度を調え、料金を払って出た先は住み慣れた池袋の街。
騒がしく、どこか捩れた街の中。
足を進めながら俺は自分の手を見下ろした。

「あのまま折ってやりゃあ良かったぜ…」

あいつの体に残った跡。
あと何日ぐらいは消えねぇんだろうか。
そんな、くだらない事を考えながら俺は自分の拳を握りしめた。

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